2021-07-21

大島の家|プランと空気の設計

先日は地元でとれた野菜のお裾分けに「大島の家」にお伺いしました。

梅雨も明け、暑い日が始まり、室内の環境がどうなっているのかお話を伺ってみると、「ルームエアコン一台でも、家中気温が安定しているので上手くいっていますよ!」と話してもらい、すごく安心することが出来ました。

実際に建主さんがモニタリングしてくれていて、結果を見てみるとエアコンのあるリビングとそれ以外の部屋の温度差がほとんどなく、上手く家全体が空調されていることがわかります。「一度家全体が暑くなってしまうとなかなか温度を下げるのが大変ですね」とのことで、やはりエアコンを連続運転することが効率よく冷暖房することを確認できました。ただ夜間はエアコンを消しても問題ないという話もあって、実体験を聞くととても勉強になりますね。

さてそういう訳で大島の家では設計初期の頃から「ルームエアコン一台でまかなえる住宅にしたい」ということを、建主さんと一緒に色々と検討してきました。

そのために重要な点として考えたことが「断熱・気密性能を高めること」、「空間のつながったワンルームのようなプラン」、「空気の流れを作る換気システム」でした。

まずは断熱と気密性については、類似した実例や温熱ソフトで室温変化を検討しながら、Ua値 0.38W/㎡K(5地域のHEAT20-G2基準が0.34)、気密性能はC=0.4を実現できました。

特に悩んだところがワンルームのようなプランと換気システムの組み合わせのところです。

始めの頃のプランは間仕切りも多く、ダクトのルートも複雑になってしまい、なかなか空気が上手く流れるようなイメージをもつことが難しいものばかり。しかし建主さんと打合せを重ねるなかで、収納力やタタミスペースを考慮した「ロフト」というものが出てきまして、それを東西に通すという通り土間ならぬ「通りロフト」にすることで、空間がつながっていく最終プランというものが出てきました。これなら空気が流れそうな期待がしますねということで、換気メーカーにこのプランをみせてみると、担当者も「だいぶシンプルなルートで空気が送りやすそうです」と話してくれて、一安心した記憶があります。

ところでルームエアコンは一様に柔らかい風を吹き出すことに優れている分、空気を遠くに届けるのが苦手という特徴があります。そのため今回の計画では第一種換気システムを用いて換気と共に空気を循環させることで、家の中の温度ムラをなくすことを考えています。

しかし「給気口と排気口をどのように配置するのがよいか?」これも色々と換気メーカーや建主さんと検討を重ねた部分です。最終的には、通りロフト部分に給気口を並べ、高い所から新鮮な空気を出して、1階の四隅(玄関収納、広縁、WIC、脱衣場)から排気することで、人がよくいる居室に給気口、収納などの空気がこもりやすい部分に排気口という配置をみつけることができ、プランと空調計画がとても近づいたように思います。

換気システム本体については、国内のメーカーを色々と比較していき、実際に展示されているものをいくつか見学にもいってみました。その中で、ローヤル電機のSE200RSという熱交換型の換気装置を採用することにしました。特徴としては、熱交換効率が高く、ブラシレスDCモーターで省電力タイプ、天井設置型ですが、反転して床設置にすることができるというのも大切なポイントでした。

このような第一種換気システムのデメリットとして、天井点検口を開けてのフィルター掃除がしにくく、定期的に行うことが難しい点があります。しかし定期的なメンテナンスを行わないと、給気口が詰まり、家の換気が出来なくなってしまうため、いかにメンテナンス性を考慮するかが大事です。

そこで大島の家では換気システムをロフト階の床に設置し、室内フィルターをアクセスしやすいように配慮しました。そのためロフトへの階段を上がるだけで簡単にフィルター清掃ができる仕掛けです。また外部の換気口も、梯子で手が届く範囲に設置されるため、足場が必要のない計画としています。

また玄関とリビング、広縁をつなぐ木製建具を簾戸にするということも、実は空気の流れを良くするという考えから生まれたものでした。

今回は建主さんの協力もあって、ルームエアコンを利用した全館空調のシステムつくりを考えてきました。大学院でお世話になった先生方も「温度や音といった、みえないものを設計することは難しいですよ」と話していたことを思い出します。

家の断熱性能や空調というのは、猛暑日の多くなっている夏場にとって重要な部分なので、今後もプランにあった空調計画を目指していきたいと思います。

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